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描いた絵の話「安達ヶ原の鬼婆」

【鬼】「安達ヶ原の鬼婆」イラスト/くろいやなぎ [pixiv]

  

一ヶ月前の話をするが、鬼婆の絵を描いた。

毎年8月に行われている、箱の中のユーフォリア様主催「愛知百鬼夜行展」に今年も参加したので、その出展用の絵である。私は鬼が好きなので百鬼夜行展では毎回鬼を描こうと決めていて、一昨年は宇治の橋姫、去年は酒呑童子だった。そして今年はものすごく鬼婆が描きたかったので安達ヶ原の鬼婆でエントリーした。好きなんだ、鬼婆が。

 

鬼婆、及び安達ヶ原の鬼婆をご存じでない方にざっくり説明すると、読んで字のごとく鬼のババァ、及び安達ヶ原(現在の福島県)にいる鬼のババァである。

ちなみに「鬼婆」と似ている怖いババァに「山姥」と「奪衣婆」がいるが、山姥は山神だったり金太郎のお母さんだったりと一部に光属性がいる怖いババァ、奪衣婆は地獄(正確には三途の川)で働く従業員の怖いババァである。対して鬼婆は1000%闇属性の怖いババァだと思って良い。鬼婆だもの。

鬼婆はほぼすべてが「何らかのきっかけで鬼に化けた人間の女」であり、「一晩泊めてくれ」と訪ねてきた旅人を殺して食う人食い鬼婆であることが多い。その「旅人を殺して食う人食い鬼婆」の伝説が全国各地にあって、中でも特に有名な伝説が「安達ヶ原の鬼婆」、だいたいそんな感じだ。

詳細は後ほどWikipediaを見ていただくとして、ものすごく要点をかいつまんで安達ヶ原の鬼婆を説明すると

・お坊さんが安達ヶ原を旅していた

・人里離れた所で日が暮れちゃったので、見つけた岩屋の老婆に泊めてくれと頼む

・老婆に「奥の部屋は絶対覗くな」と忠告されるも覗いてしまう

・そこにあったのは死体の山で、老婆は人食い鬼婆だったと知りお坊さん逃げ出す

・老婆もとい鬼婆がめちゃくちゃ追いかけてくる

・お坊さんが法力でぶっ倒し、仏様の力で鬼婆は成仏して埋葬された

諸説あるが、だいたいこんな話である。ちなみに埋葬された塚は「黒塚」というのだが、今では鬼婆のことを「黒塚」と呼んだりする。

さらに「鬼婆はもともと公家の乳母で、奉公していた姫の病気を治すため妊婦の生き肝を求めていた。だが殺した妊婦が自分の娘だったことを知り、気が狂って人食い鬼婆になった」というバックストーリーもある。つらい。

ちなみに「安達ヶ原の鬼婆」の舞台となった福島県の安達ヶ原には、鬼婆の岩屋や鬼婆が包丁を洗った血の池などがある聖地・観世寺と、鬼婆の墓である黒塚がある。めっちゃ行きたい。

その他いろいろともっと説明したいことあるのだが書いていると絵の話をしないまま終わってしまうので、鬼婆伝説が気になった方はとりあえずWikipediaを読んでいただきたい。

黒塚 - Wikipedia

 

 

で、私が一番最初に鬼婆伝説を好きになったのは、好きなバンドである陰陽座がこの伝説をテーマにして歌った曲がきっかけだった。

組曲「黒塚」~安達ヶ原

組曲「黒塚」~安達ヶ原

  • provided courtesy of iTunes
組曲「黒塚」~鬼哭啾々

組曲「黒塚」~鬼哭啾々

  • provided courtesy of iTunes

こちら。

鬼婆の心情を歌った「安達ヶ原」と、鬼婆が僧に討たれる「鬼哭啾々」の二曲仕立て。好き。めっちゃ好き。最早この二曲を紹介したいがためにこの記事を書いていると言っても過言ではない。終始滲み出ている悲壮感と徐々に前に出てくる鬼婆の狂気とやるせなさ、もう大好きオブ大好き。

最早このブログは閉じていいから陰陽座を聴いてほしい気持ちでいっぱいなのだが、絵の話を読みにこの記事を開いた人が私を含め1人ぐらいいると思うので話を進めると、鬼婆伝説を知ったきっかけがこの曲だったので、鬼婆に対して哀愁感や悲壮感みたいなものをずっと感じていた。

一方、私は両親が共働きだったので祖母に育てられたのだが、優しさの裏に「逆らったら山に捨てるぞ」みたいな威圧感がずっとあって逆らえなかったし、祖母が怒ったり機嫌が悪かったりすると「ああこれは鬼婆ですわ…」とぼんやり思っていた。ただふとした時に祖母から漂う寂しさとか孤独感とか、昔語りをしている時の遠い目や端々に見え隠れする後悔とかやるせなさとか、そういう漠然とした何かをずっと見ていた。

だから思うのだが、今がどんな姿であっても、生まれた時は赤ん坊で、一生懸命泣いたり遊んだりした幼少期があって、思春期もあって、恋をした時期もあって、何かに一生懸命打ち込んだ時期とかもあって、幸せなこと、つらかったこと、いろんなことが沢山あって、その時間と喜怒哀楽が積み上げられた過去は、老婆になっても、あるいは鬼に化けた後でも、決して消えてはいないと思うのだ。

 

ということを何年も考えていたので、いつの間にか怖いながらも哀愁漂う鬼婆像が私の中に出来上がっていた。

のでそれをどうにか頑張って絵にしたいなあと思いながら描いたのが今回の鬼婆さんである。

前置きが長くて申し訳ないがここからが今回の絵の話だ。もうここまで書いて腹一杯なのだが、読んでいる人が私を含めて1人ぐらいいると思うので話を進めると、とにかく怖さと哀愁感を全面に出すことをめちゃくちゃ頑張った。

絵を見てくれている方にお伝えできているかはわからないが、顔はよく描けたと思うのでとりあえず見ていただきたい。

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当然モデルは祖母である。本人はもうちょい童顔だけど。

 

鬼婆が襲いかかってくる瞬間よりも、こっちを見てロックオンされた瞬間の方がゾワッとすると思うので、というか私が祖母のそういう瞬間が怖かったしホラー映画でもそういうシーンが一番怖いので、静かながらも怖い絵を目指して描いた。画面的には地味ではあるけれど母や友人に見せたらそれなりに怖がってもらえたので、たぶん怖い絵にはできてると思う。

とにかくシンプルにしたかったので山積みにする予定だった死体を減らし、何なら白骨も転がす予定だったけどボツにした。ちょっと無念。白骨ごろごろ転がしたかった。でもどう頑張っても悪目立ちにしかならなかった。無念。

たぶんちょっと前までならもっと画面をごちゃごちゃさせてたと思うのだけど、何もない空間の怖さを「死霊館エンフィールド事件」で学んだので鬼婆さんの後ろは全部塗り潰した。死霊館を見てなかったら絶対テクスチャぶっこんでごちゃごちゃさせてたと思う。ありがとう死霊館。ちなみに青~緑をメインにした怖い色味は「インシディアス」で学んだ。ありがとうインシディアス。大切なことはいつだってジェームズ・ワン監督が教えてくれるのだ。

 

あとはとにかく全年齢向けを意識して描いた。そもそも展示が全年齢対象だし、スプラッタにしすぎるとそっちに目がいってしまい前述の哀愁感なんぞ目にも入らないので、血は彩度を下げまくったし、死体は手足だけにして見た目マイルドにした。つもり。元々グロい絵を描きたい願望があまりないのでいつもどおりの匙加減ではある。でもスプラッタな鬼婆さんを描いてみたい気持ちはあるのでたぶんそのうち描く。

そういえば自分の創作でも鬼婆の絵を描いていたので差別化が大変だった。髪のゆるふわ具合とか角の長さとか目の色とか着物の色とか包丁の形が違うのだけどたぶん同じに見えてしまうと思うので、今後我が家の鬼婆をアプデしていくしかない。がんばるぞい。とにかく怖いババァの描き分けが難しい。描けばいつも顔が祖母に似ている。祖母以外のモデルを探そう。